#不妊症 症例報告 鍼灸・推拿(中医)
症例、不妊症 29歳、女性、2014年3月中旬に来院
〔主訴〕
① 25歳結婚、一年目避妊し、2年目から避妊せず、妊娠できない。
②疲れやすい、動悸。
③生理痛
〔経過〕
大学時代から月経周期ほとんど35日から40日、月経期間は7日、月経の4日目から月経の終わるまで我慢できない下腹部痛があり、出血量少、黒い血の塊が混じり、時々病院で漢方(煎じ薬、中身よくわからない)や鍼灸治療(背中)を受けていたが、痛みが緩和されたが、月経周期が相変わらず、月経量少、血の塊もあり、たまに痛み止めを飲んで忍んでいた。毎月の繰り返し。
4年前に結婚し、1年目仕事の関係で避妊したが、2年目から避妊せず、妊娠できない、検査には原因不明と診断され、漢方薬を半年以上を飲んで治療したが、妊娠ができないため、知人の紹介で来院。
〔来院時の症状〕
①ここ4年近くに疲れしやすく、寝ても疲れが取れない。
②時々に動悸、精神的なストレスがあると胸悶感(胸部に締め付けられる感じ)、夢が多く。
③月経の2週間前からイライラ、乳房の脹痛、月経の1週間前には腰部に重だるく痛い。
④手足の末端がつめたく、一晩中寝でも手足が温められない。
⑤月経の4日目から下腹部に痛くなり、月経後にもしばらく元気がでない。
〔触診〕
・下腹部に冷たく圧痛が激しい。
・両足が冷たく、特に手足の先。
・脈→沈細弱、右関部細くて無力、左関部弦細、両尺部とも沈遅無力。
〔望診〕
・舌体は紫暗淡色、胖大、舌辺に歯痕。
〔月経歴〕
13か14歳に初潮、大学から月経周期が延後、35日以上、経量少、経血に暗黒色の血塊がある。
〔既往歴〕
①小さいごろから体質が弱く、かぜなどがよくあった。
②10年前から泥沙型胆石症と診断され、2013年に手術した。
〔中医辯証=診断〕
当患者は、素体脾と腎が不足である。脾は気血生化の源、後天(生まれてから生きている間)の本となり、腎は蔵精や生殖と月経を主り、先天(遺伝)の本だと中医理論がある。
・月経量少、月経周期延長の原因は、脾気虚(脾の働き低下)、生血の働きが低下と、腎気虚(腎の働き低下)となると、腎精不足、精血互化が不能、血液が時間通りに子宮に集まられず、血海(子宮)空虚、衝任失養により引き起こされたもの。月経の4日目から腹痛は血虚のしるしである。
・倦怠無力は四肢の筋肉に与える血が不足によりもの。
・先天不足と後天不足のため、子宮(血海)空虚、衝任失養のため、摂精受妊の働きが低下し、妊娠ができなくなる。
・四肢の末端が冷たいのは、脾腎不足、温化作用が低下により引き起こしたもの。
・月経前に乳房脹痛、月経に血塊があるのは、脾虚肝鬱、血行不暢のためである。
・舌体は胖大、舌辺に歯痕が脾腎不足、水湿停滞のしるし、舌質が暗淡色は血虚兼瘀血のしるしである。
・右関部細くて無力は脾気不足のしるし、左関部弦細脈は肝血不足のしるし、両関部に沈遅無力が腎陽虚のしるしである。
以上の辨証により不妊の原因は脾腎両虚、血海空虚、兼肝鬱血瘀と判断した。
〔診断〕不妊 (脾腎両虚、血海空虚、兼肝鬱血瘀型)
〔治療方針〕 温補脾腎、益養精血、疏肝理気化瘀
①鍼+腹部、腰部、下肢膀胱経の推拿
②治療回数 週に2~3回 推拿治療(30分)と鍼(30分)の治療。
〔治療結果〕
・初回目(3月15日) 治療直後、全身が軽くなり、ホカホカと感じる。
・2回目(3月19日)疲れやすいが減軽し、手足の先端の冷えもだいぶ取れた。
・3回目(3月27日)来院の病状:3月20日から国内に4日間の旅行中に、雨や寒い日にアイスクリームを食べた後、下腹部に脹痛がひどく、下り物に血も混じっていて今日まで続いている。月経の予定日は4月6日前後。治療後には、下腹部の脹痛がほとんど感じない。
・4回目(4月2日)下腹部の脹痛と下り物がなくなった。激しい夢が近頃よく見る、睡眠が浅い。
(4月6日)は月経の予定日であるが、乳房脹痛がなく、イライラも軽。
・・・
・8回目(4月24日)体調はいい、月経まだ来ない。4月28日が病院にて妊娠を確認した。一週間後、病院にて再度妊娠を確認された。
・2015年1月に元気な女の子が出産した。出産までずっと当治療センターで体調管理をし、体調によって2、3週間に一回の来院の来院もあれば、週に一回の来院もあった。
〔治療後感想〕
妊娠できるかどうかは月経周期、出血量及び内臓や衝任脈の働きなどの関係深いと中医学は考えている。
本症例、中医理論から見ると妊娠必須条件は、①月経周期(28日±2日)が延期され、②月経量もすくない、③疲れやすい、乳房脹痛や腰の痛みなどの随伴症状、④舌象、脈象などすべて不調が生じている。そのため、月経量や周期および随伴症状など正常状態を戻さないと、妊娠ができないと考えられる。